「国語」と「日本語」は違う?
- Aya Sugiura
- Sep 3
- 3 min read

両親ともに日本人で、日本に住み、家庭で日本語を使っていても、子どもが自動的に「国語が得意」になるとは限りません。日本語を母語として育っていても、国語のテストや読解問題が苦手な子はたくさんいます。よく考えれば、日本の学校のクラスの中でも、国語の成績には幅があり、得意な子もいれば苦手な子もいるのは当たり前のことです。
さらに、海外子女やインターナショナルスクールに通う子どもの場合は、「日本語を話せる」ことと「国語の力がある」ことの間に大きなギャップが生まれやすいのです。
「国語」は日本の学校教育で扱われる科目で、漢字や読解、作文などが中心になります。一方で「日本語」は言語そのものであり、会話や語彙、表現力といった運用能力を指します。家庭で日本語を使っていれば日常会話は自然と身につきますが、国語の力は勉強しなければなかなか伸びません。そしてこの国語力が不足すると、子どもの学習や将来に深刻な影響を及ぼします。例えば数学の文章題を正しく理解できず、答えにたどり着けない。理科や社会の長文問題で問いを読み違えてしまう。こうしたことは珍しくありません。さらに大人になれば、契約書や説明文を読み取る力、レポートやメールを正しく書く力が欠かせます。国語が弱いままだと、仕事の評価や信頼に直結し、社会生活そのものに支障が出るのです。
私がインターナショナルスクールで日本語教師として勤務していた時、こんなケースがありました。両親ともに日本人で、日本で生まれ育ったのに、小学校低学年からインター校に通っていたために、日本語で作文をほとんど書けない状態だったのです。5年生になっても、自分の考えを短い文章としてまとめるのが難しかったのを覚えています。
この学校では国語の授業時間は週に2回、合わせて90分程度(45分授業×2回)でした。一方で、日本の学習指導要領によると、小学校5年生の国語科は年間175時間、1単位を45分として換算すると、週あたり約5時間ほどを国語に充てていることになりますmext.go.jp+1。つまり、インター校での国語の学習時間は、日本の標準の3分の1程度にすぎなかったのです。
さらにこの生徒は英語も第二言語として学んでおり、思考の基盤となる言語が日本語にも英語にも十分に育っていない状態でした。その結果、数学や理科などの他科目の理解にも影響が出始め、中等部進学前に「このままでは進学できる高校が限られてしまう」とご家庭と相談した上で、日本の学校への転校を提案するに至りました。
国語と日本語は重なる部分が多いですが、お子さんが「日本語を話せているから大丈夫」と思っていても、国語の力が十分に育っているとは限りません。海外子女にとっては、まず日常的に日本語を使い、考える基盤を整えることが不可欠です。その上で国語としての読解や作文に取り組むことで、将来の学習や進路にもつながる確かな力になります。



Comments